約束された場所で
書 名:約束された場所で
著 者:村上春樹
発行所:文芸春秋
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この本は地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者(元信者)にインタビューし、彼らの気持ちや主張をもとに編集された本である。
この本の中では8人のオウム信者または元信者の記事が掲載されている。その中には現在も信者の人、すでに脱会した元信者もいる。
それぞれ、子供のころからの生い立ちから始まり、オウム真理教に入信したきっかけ、入信後の生活、地下鉄サリン事件発生後の心の変化など詳しく語られている。
入信したきっかけなどは1人ひとり異なるけれども、共通しているのは現世での生活の中に何かしら充足感を得られないとか、疎外感を感じたりということがあり、オウムの中に吸い寄せられるように入信していったようである。
誰でも若い頃は精神的に何かを求めるような時期があると思うが、向かった先が運悪くたまたまオウム真理教だったのか。
オウムに入信後、修行を続け自己を向上させていく生活や、オウムの活動に励む功徳を積むことに俗世にない充足感を得ていていたようである。
ただ、オウムに対する考え方は、人によりさまざまのようだ。教祖麻原彰晃らが生活する同じサティアンで活動し、麻原や幹部と接する機会の多い信者の中には、早くから麻原や幹部に不信を抱いていた人たちもいたことがわかる。
麻原や幹部達をひややかに眺めていた信者の発言もあり、教団の中での信者たちの生活がおぼろげながら見えてくる。
また、麻原彰晃と幹部たちが地下鉄サリン事件を起こしたことを知った信者たちの、その後の心境と行動も語られており、この問題の深刻さが理解できる。
この本はとても深い内容を含んだ読み物だと思う。この事件に少しでも関心がある人にはぜひ読んでもらいたい本である。
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