« 花でできたクマ | トップページ | 蒼ざめた馬を見よ »

2012年11月20日 (火)

オウム帝国の正体

**********************
書 名:オウム王国の正体
Pa055354
著 者:一橋文哉
発行所:新潮社
**********************

この本は題名が示す通り、オウム真理教と名のるカルト集団が起こした一連の事件について、マスコミの報道や裁判によっても明らかになっていない真相を解き明かしたものである。

 

警察庁警備局が94年11月に作成した「オウム教団に関する基礎報告書」を読むと、公安当局がオウムの終末思想を真っ向から受け止め、真剣に対策を講じていたことがわかる。

 

《オウム教祖・麻原彰晃は、自らの予言的中率を98パーセント以上とした上で(中略)これから2000年にかけて、筆舌に尽くし難いような、激しい、しかも、恐怖に満ちた現象が連続的に起こる。
日本の国土は核によって荒れた大地と変わる。その時期は1996年から1998年1月にかけてである。日本を攻めるのは、アメリカを中心とした連合国。大都会においては(中略)十人中九人は死んでしまうなどとし・・・・》

 

報告書は、このように麻原の予言内容を延々と記し、それを決して軽視しないように警告している。何しろ、予言が的中しなければ、教祖のカリスマ性は色あせ、教団の権威が失墜するには必定。このため、警察当局もテロ行為の可能性を示唆していた。

 

オウムに対する強制捜査の約1か月前に作成された公安内部の捜査報告書を読むとオウムの救済計画とハルマゲドンの中身がより鮮明に分かる。

 

《オウム教団は、麻原教祖の予言を的中させるため、首都圏で数百万人規模の死傷者を出させるテロを実行するしかないところまで追い詰められている。そして、廃墟と化した首都に、オウムの理想共同体である独立国家を建設しようとしている・・・・》

《計画は5段階に分かれ、第一段階はサリンを使った無差別テロ。第二段階は銃器や爆発物を使用した要人テロ。第三段階は細菌兵器を上水道に混入する無差別テロ。第四段階はサリンなどの薬剤の空中散布によろ無差別テロ。そして第五段階は核兵器に首都殲滅である・・・・。》

《麻原教祖ら教団幹部は最終段階直前に、新潟などの日本海沿岸から潜水艦でロシアに脱出する・・・・》

これは、地下鉄サリン事件が発生する前に、公安当局が捜査し、分析したオウムのハルマゲドン、救済計画の内容である。

確かに、地下鉄サリン事件はハルマゲドンの第一段階、国松長官狙撃事件は第二段階に当たると言えるし、オウムがサリンをはじめ、細菌兵器や銃器などを製造していたことも、後の捜査で明らかになっている。

また、オウムは旧ソ連製軍用ヘリを購入しているし、戦車や潜水艦を買おうとしていた事実も確認されている。

公安当局はこの段階で、オウム教団がロシア国内に支部を設置し、信者村建設に動いていたことを把握していたという。

   ********** 中略 **********

そもそも、麻原はじめ教団幹部たちがなぜ、ここまで荒唐無稽で、冷酷無残な犯罪を考え、実行できたか、という疑問がある。

もちろん、直接的には「カルト集団ゆえになせる業」ということになろうが、そこにはオウムという狂信的集団に対し、数々の悪知恵と、サリンをはじめとする武器と、国際的な規模を持つ地下コネクションを授けた複数の輩がいた、と考える方が合理的であろう。

そうでなければ、オウムがいくら、常人の及ばぬような才能と行動力、資金力を持つ集団であったとしても、ロシアや北朝鮮の高官に直接面会し、自動小銃から軍用ヘリ、核燃料に至るまでの軍需物資を手に入れることはできなかったはずだからだ。

具体的にはまず、国際的な武器シンジケートの存在を抜きには語れないし、北朝鮮をめぐる半島情勢や中国・台湾の対立に代表される東アジアの軍事的緊張が続く中で、米ロ両大国の思惑や軍産複合体の野望が蠢いていたことも見逃せまい。

国内に目を転じれば、暴力団をはじめとする”闇社会の面々”がオウム教団に群がり、巧みに操りながら、彼らが生み出す莫大な利益を貪っているとみられるし、その外周に連なる政治家や官僚たちの言動も。「犯罪」と呼んで差し支えないものが多い。

公安当局は、これらの情報を入手しながら、警察首脳の了解が出ないと見るや、わざとオウム真理教だけの犯罪として処理し、事件の表面的な解決を急いだ。

万事に弱腰だった政府は早々に、オウム事件を国内犯罪として処理することを決め、時の首相・村山富市は国家公安委員長だった野中広務に、刑事事件として処理することを命じている。

一連の事件をこのまま、単なる「カルト集団の犯罪」として処理してしまえば、それは、多くの犠牲を出した一連の事件の教訓を全く生かさぬばかりか、真の悪を再び闇に解き放ち、第二、第三のオウムを作り出すことにほかならない。

以上は、この本のほんの一部を抜書き、編集したものである。

この本の中に書かれている、オウム事件の中でも「国松長官狙撃事件」、「村井刺殺事件」、「坂本弁護士一家殺害事件」にかかわる内容には、驚くばかりである。

« 花でできたクマ | トップページ | 蒼ざめた馬を見よ »

ドキュメンタリ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: オウム帝国の正体:

« 花でできたクマ | トップページ | 蒼ざめた馬を見よ »