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2012年6月23日 (土)

毒婦

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書 名:毒婦
   木嶋香苗100日裁判傍聴記
著 者:北原みのり
発行所:朝日新聞出版

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この本は、インターネットで知り合った男性たちから1億円以上のお金を受け取り、その男性たちを練炭自殺を偽装して殺害したという疑いで逮捕された木嶋佳苗(逮捕当時34歳)の裁判の傍聴記である。

書いたのは北原みのりという1970年、神奈川県生まれの女性コラムニストである。

木嶋佳苗の裁判は2012年の1月10日から始まった。北原みのり氏は1月11日の第2回公判から傍聴したとある。

出廷した佳苗について北原みのり氏はこう書いている。何よりも意外だったのは佳苗の小ささである。顔や胸が大きいせいか座っているときは気がつかなかったが、起立した時の佳苗は155センチあるかないか、肥満気味ではあるが、目立って大きい女というわけではない。・・・そして、なんといっても、声だ。・・・・それはあまりに優しく上品だった。・・・・。


佳苗は3件の殺人、3件の詐欺、3件の詐欺未遂、1件の窃盗で起訴された。3件の殺人については無罪を主張し、詐欺については一部認め、窃盗は否認している。

この日の公判では、検事はまず、2009年8月6日に埼玉県にある駐車場にとめられていた車の中で亡くなっていた大出嘉之さん(当時41歳)の事件から尋問を始めた。
この日、佳苗が大出さんとやり取りしたメールが検事によって公表された。婚活サイトで佳苗のプロフィールを読んだ大出さんは佳苗に対して「ウインク」という合図を送った。佳苗のプロフィールには要約すると次のように書いてあった。「遊び友達をお探しの方はご遠慮ください。おいしい手料理で愛情を示したいと思います。本当に運命の人に出会えたら電撃的な結婚も」

大出さんは佳苗のプロフィールを読んで「なんてまじめな方だろうと感心しました」とメールした。佳苗はすぐにこんなメールをした。「私は現在学生です。結婚を前提に学生生活を応援してくれる人を探しています」。さらに「男女のお付き合いですから、肉体関係の相性もあります。本気で思って下さるなら交際期間中も避妊しなくても構いません」とメールを送ったという。

佳苗は大出さんと婚活サイトで出会った2日後に、デートし、その8日後にセックスをし、翌日に470万円を受け取っている(佳苗は否認)。大出さんは佳苗と出会ってから23日後にこの世を去った。大出さんは「今日相手のご家族に会うのです」とブログに書いたのを最後に、練炭の焚かれた車内で亡くなった。遺体からは睡眠薬が検出され、車内には車の鍵がなく、練炭を焚いたのにしては、手や服に炭粉がついていない不自然な死だった。

このわずかな期間に、佳苗からは、大出さんの心を射抜くような熱いメールが怒涛のように日に何通も送られたという。大出さんの母親は、死のその日まで佳苗との未来の話をしていた息子の様子を、「夢を見ているように楽しそうでした」と話した。母に続き証言台に立った大出さんの兄はこう話した。「弟の亡骸は非常に穏やかで口元は少し笑っていました。自殺をしようとする人間がそんな顔で死ぬでしょうか」

1月16日、第4回公判。この日、佳苗の「本命」と目される男性(S氏)が登場した。この男性は佳苗がお金を奪わずに、定期的にデートを重ねていた男性である。S氏は佳苗とは約10年前に出会った。初めはセックスフレンドだったが、佳苗が逮捕される5年ほど前から真剣に交際を始め、週末には佳苗の家を訪れる関係になった。ここ数年は佳苗との結婚を意識して、S氏は折に触れて佳苗に「いずれは結婚しようね」と伝えていた。

佳苗がS氏に送っていたメールは大出さんや、婚活サイトで出会った他の男性へ送るメールと全く違う印象を受ける。大出さんや他の男性に送るメールからは強引な要求の中にも品の良さを窺わせるが、S氏へのメールは絵文字を多用し砕けた調子のものが多い。だが、佳苗はこのS氏に本名を伝えていない。佳苗は初対面の時から「吉川桜」と名乗り、自分のことを“桜は~”と呼んでいた。

普段のデートは、主に佳苗の自宅で、佳苗の手料理を食べて過ごした。外食やホテルに泊まる時でも、年下の佳苗と費用を折半にしていた。母親のようにS氏を世話し、経済的に負担をかけず、セックスを気楽に楽しめる相手だった佳苗に、S氏が執着していたのではないか。佳苗の妹の供述によると、佳苗にはS氏と結婚の意思はまるでなかった。

当初、警察は事件にS氏がかかわっているのでは、と疑いを持っていたといわれている。ところが、警察がS氏に事情聴取し、吉川桜が偽名であることや、佳苗の容疑について告げた時、S氏はあまりのショックで膝から崩れ落ちたという。それは警察が一瞬で「この男は事件とは絶対に関係ない」と確信するほどの乱れっぷりだったという。

この日の午後は、神奈川県に住む詐欺未遂事件の被害者男性が証言台に立った。大出さんと時を同じくして同じ婚活サイトで出会った50代の男性B氏だ。佳苗はB氏にも大出さんとほぼ同じ内容のメールを送っていた。「料理学校に通うので学費が必要だ」「交際の条件は経済的支援である」「電撃的な結婚もあるだろう」というようなものだ。佳苗のメールや電話の優しい様子に、B氏もメールで知り合ってすぐに50万~60万の学費なら出す気になっていたという。

ところが、佳苗の要求は約100万円だった。100万円を超える学費に驚いたB氏は、佳苗が通っているという東京・代官山の料理教室「ル・コルドン・ブルー」のホームページを見た。そこには要求されている額より少ない授業料が記してあったのでそのことを伝えると、佳苗からは逆切れされたようなメッセージが届いたという。「私のためにどれだけのことをして下さるかが、愛情の証です。学費を立て替えられないというのなら、私への愛情や誠意がないと判断するしかないと思います」

それまでの温かく優しいメールとまるで違うこの調子にB氏は動揺し、そのメールを上司に見せ相談したという。すると上司は「それは結婚詐欺じゃないか?やめたほうがいい」と言うので、B氏は「結婚詐欺じゃないですか?」といったことを、そのままを佳苗に伝えたのだった。すると佳苗からは「私のデータを消去して下さい」というそっけないメールが1通届いたきり、連絡がなくなったという。

笑みを浮かべて亡くなった男、お金を払わず後悔した男、本名さえ知らない本命の男、3人の男は誰一人「佳苗」に近づけなかった。

以上は、この本のさわりの部分を抜粋・アレンジしてまとめたものである。この後、この事件にかかわった人たちの証言、公判中の佳苗の様子、などが次々と紹介されていく。

この木嶋佳苗の事件については、ここで紹介した北原みのり氏が書いた「毒婦」の他にも出版されているのでぜひ購入して読んでください。

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